カシミールマッサージについてvol1

カシミールマッサージについてvol1

セラピストのかおるです。私が当店でタイ古式マッサージと同時に提供しております、カシミールマッサージ。
この謎深きマッサージについて、連載形式で、わかりやすく解説してゆきます。

ベースとなる書籍は、「TANTRIC & KASHMIRI MASSAGES」(MICHÉLE LARUE著)です。私が知る限り、カシミールマッサージについて詳しく扱った本はこれだけです。あとはネットの情報も交えつつ、女風セラピさんにも役立つ情報を発信したいと思います。

初回はタントラとカシミールマッサージについて、ざっくりとした私見を述べます。

まず、上記書籍のタイトルにもあるTANTRIC(タントラ)ですが、Wikipediaで調べると膨大な情報が出てきます。タントラという言葉は宗教的なニュアンスが強く、ヒンドゥー教や仏教、密教など複数の宗教をまたいで使用されており、それぞれ定義も異なります。

ただ、学術的に理解するメリットはほとんどありません。そこで本記事では、タントラとは、”自分の中に存在する本当の自分(自己)に気づくための精神的な修養(取り組み)”と定義します。

もともと「タントラ」には、布地における縦糸とか、織物の広がりといった意味があるのですが、それが転じて、感情の解放というニュアンスを帯びるようになりました。

さて、現代は”こころ”の問題がクローズアップされています。メンタルやっちゃう人、めちゃくちゃ増えています。

こころが病む理由は様々ですが、大きな原因は感情の抑圧です。言いたいこと(好き、嫌いなど)を言えないことは、立派な抑圧です。そうした抑圧はだいたい、何らかの支配の下で生じます。支配は、パートナー間や家庭のみならず、学校、会社、そして国家のあらゆるところに見いだせます。

ここに、支配をする側の人間は、もっぱら男性であると考えられてきました。西洋はもちろん、東洋でも例えばインド社会には、男性による分かりやすい支配構造があります。我が国では、男女平等が長らく叫ばれているものの、政治家の多くはいまなお男性ですし、家庭内やパートナー間でDVを振るうのもだいたい男です。

もちろん、女性による支配もあります。例えば子供に対する母親の過干渉や過保護も(わかりにくい)支配です。

一方、支配される側の人間は、まず心に不安を覚えます。特に暴力を振るわれたり、暴言を吐かれると、心に大きな傷が残ります。その傷から怒りや憎しみの感情が生まれ、ついには相手に対して強い恨みを抱くかもしれません。

ただ、そうした負の感情を表に出すことは、特に大人になると、難しくなります。不満を素直に口にでき、怒りをあらわにできる社会人は、さほど多くないと思われます。まして日本人は、僕の世代なんかそうですけど、耐え忍ぶことが美徳とされてきました。特に男性にはその傾向があり、巷は眉間に怒りジワを刻んだ男性サラリーマンで溢れています。

女性の場合は、男性に比べますと、感情を素直に口にできる方が多いようですが、会社や家庭で抑圧されている方は多くおられます。そして抑圧が続くと、心身症ともいいますように、心と体のバランスを崩してしまいます。

ところで感情は身体のどこにあるのでしょうか。

西洋では、古くは心臓に感情が宿ると考えられていました。現代ですと、脳が感情を生み出していると考える向きもあります。東洋では、地域にもよりますが、中国や日本であれば、古来、感情は腹(ハラ)に宿ると信じられてきました。

ちなみに、お腹に宿る負の感情を、腹部マッサージを通じて解放することを目的にしたセラピーが、チネイザン(気内臓)です。

また、近年では、ホルモンのような化学物質のバランスで感情が決定されるとの仮説もあります。感情に関わるホルモンは、肝臓や腎臓などの主要な臓器で分泌される他、意外にも皮膚や骨も、感情に関わるホルモンを生産します。

また、運動をすると嫌なことを忘れたり、スッキリしたりしますので、筋肉もまた感情に関わる主要な臓器といえます。

そのように考えますと、こころの動きはからだの働きによってもたらされていることがわかると思います。こころとからだは、コインの裏表のように、表裏一体なのです。

ですので、身体をケアし、いたわることによって、こころも癒やされます。からだに溜め込んだ負の感情も洗い流せます。そのため世界各地で様々なマッサージが生まれ、これまでに発展してきました。

さて、本題に戻ります。

まず冒頭で、タントラとは、自分の中に存在する本当の自分に気づき、(抑圧した)感情を解放する取り組みであると述べました。

そのような取り組みとしては、例えば瞑想や呼吸、ヨガが挙げられ、これらも「感情の解放」につながる点で、タントラ的なアプローチといえます。ただ、それらのアプローチは基本的に個人単位で行います。二人以上のグループで行うこともありますが、実践するのは個々人です。

対して、二人がペアとなって行うタントラワークもあり、その代表例が、タントラマッサージです。

タントラマッサージというと、何やら大げさですが、マッサージをタントラ的に行うということです。

つまり、「真の自分の気づき」と「感情の解放」を目的に行うマッサージというと、具体的かと思います。ただ、タントラ的なマッサージですので、手技に入る前に、瞑想や呼吸(ブレスワーク)を入れるのが通常です。

また、手技の手順にも特徴があります。やみくもに触るのではなく、たとえばチャクラを順に開くとか、体のエネルギーラインに沿って手を滑らすなど、一定のルートがあります。

そして、肝心のカシミールマッサージもまた、タントラマッサージの一種であり、手技のバリエーションが豊富であり、特にダイナミックな動きに大きな特徴があります。

セラピストがクライアントと一組となって絡み合い、様々なムーブや手技が、両者協力の下に繰り出される姿は、はたから見ても大変魅力的です。このときクライアントは、自分の身体に触れて移動するセラピストの手に意識を集め、「いまここにいる自分」を実感します。あれこれ考えず、ただ快に集中するのです。

そうすることで、悲しみや不安、怒り、憎しみといったネガティブな感情が次第に解放されてゆくことが期待されます。

以上、タントラとカシミールマッサージについて、非常にざっくりと説明しました。タントラ一つでも理解が困難ですので、初回ではあくまで私の理解に基づいて、エッセンスを少々紹介するに留めました。次回からは、書籍「TANTRIC & KASHMIRI MASSAGES」の章ごとに、タントラマッサージとカシミールマッサージについて解説してまいります。

(続く)

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